第三部064話 満面の笑みが導く(宇治の清掃奉仕2)
Sさんの呼びかけに応じてお掃除に参加し出すと、
第一回目は「こんなに捨てやがって」と、ぷりぷりしていました。
真夏で暑かったせいもあると思います。
三回目の今回は、掃除しながら、宇治川沿いの美しい景観に心が洗われました。
そして怒りは出ませんでした。
一時間くらいで宇治川を一周して、お掃除はおわりました。
参加者のみなさんと、喫茶店のモーニングをいただきました。
会にモーニングを入れているのは、参加者同士和やかになり、コミュニケーションがとれること、お掃除の疲れを癒せながら、お掃除したご褒美を自分で自分にあげられること、などがある、とSさんがおっしゃっていました。
なるほど、と思いました。
喫茶店でモーニングを食べお喋りをし、解散となりました。
そのあとのことです。
私は宇治橋を渡り、初めの京阪宇治駅前の交差点にたどり着きました。
その宇治橋を渡っている途中から、不思議な事が起こりました。
からだの奥から、なにかがわいてきて、ひとりでに顔が動くのです。
宇治橋を渡り切った時には、満面の笑みになっていました。
実際にはマスクをしていたので、私が満面の笑みになっていることは誰にもわからなかったと思います。
奥から湧き出てくる満面の笑みを感じきっていると
ふと視線は足元にいき、タバコの吸い殻とジュースのパックのゴミをみつけました。
気が付けば私はトングとビニール袋を出して、ごみを拾っていました。
満面の笑みを感じきっていると、気がつけばお掃除を一人でもくもくしていました。
無心でした。まるで座禅のような気持ちでやっていました。
マスクの下の満面の笑みをしたまま、宇治駅の前から自宅までの道のごみを掃除しながら帰りました。
自宅の前までたどり着いた時、ちょうどゴミの日の前日だから、集めたごみをそのまま出せばいいことに気づきました。
家に帰ると、服を着替え、洗濯機にスイッチを入れて、そのまま1時間寝てしまいました。
そんなに疲れていると感じなかったのですけれど。
疲れていたのでしょうね。
心地よい眠りでした。
目が覚めたらお昼前でした。
その日一日中、なにかわかりませんが、体のどこか、頭のどこかが「明るい」ような感じがしました。
お掃除など「善行」をすることが、その人を護るのかもしれませんね。
他人や社会のためにしているのですが、同時に自分の為になっているのかもしれません。
そういえば
Sさんはお掃除の会のよびかけをする前から、自主的にお掃除をされていたんだっけ
と思い出しました。
それを思うとSさんは素晴らしいなと思いました。
続く