第四部25話 平山郁夫の西域の壁画(薬師寺6)
薬師寺の「玄奘三蔵院伽藍」のなかに、平山郁夫さんが描いた、西域の壁画がある、というので、見ました。
玄奘三蔵さんのいらっしゃる「伽藍」のすぐ横です。
今まで写真で何度も見たことがある、おなじみの平山郁夫さんの日本画の壁画ですが、
そこの壁画はこれまでの平山郁夫さんの絵とは、まるで、ちがいました。
どう違うかと言うと、うまくいえないのですが、
私は壁画を一目見て、口をあんぐりさせました。
「なんじゃ、こりゃ」
仏教でいう、神々の世界「須弥山」を描いているのですから、
この世のものではない、のは頭ではわかっていました。
本当に、この世のものではなかったです。
天上界 でした。
極楽浄土とかいうレベルではありませんでした。
私たちの見識をはるかに越えた領域があるんだ、、、、という感じでした。
確か、玄奘三蔵法師は、旅立つ寸前に「須弥山」の夢を見ています。
(参照↓↓↓)
【漫画動画】三蔵法師玄奘ものがたり⑨ 須弥山(シュメール)に登る - YouTube
海に浮かぶ須弥山、近づこうにも怒涛の波が押し寄せるし、船もない。
玄奘はそれでもいい、と海に足を踏み入れます。
気がつけば海面を歩いています。
足元には石の蓮が海の底から伸びて、玄奘の足を海に沈まないように支えています。
須弥山にむかって、水の中へ足を踏み出すと、足を置いところに、石の蓮の花が出てきて、玄奘の足を支えます。
うしろをふりむくと、足をはずした途端に、石の蓮は海の中に沈んでいきます。
戻ることはできません。
前進するのみです。
一歩一歩、足を進めるごとに海の中から蓮の花が出てきて、玄奘の身体を支えます。
海を渡り、山のふもとまでたどりつきました。
山は険しくて登れそうにありません。
試しに登ってみようとします。
「うぅむ、登れない」と思った時、玄奘の身体を下から支えるように強い風が吹き、あっというまに山の頂上まで登れました。
「見晴らしが良い。
視界を遮るものは何もない。」
と喜んでいると、そこで玄奘は目が覚めました。
「今日は西域へ出発する日。この夢はきっと天竺にたどり着けるという予兆なんだな」
と玄奘は思いました。
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玄奘の旅や生涯を書いている本には、たいていこの夢のことはかいてあります。
玄奘が夢でみた「須弥山」とはどんな山だったのでしょうか?
平山郁夫さんが描いた「須弥山」は、見た目は「天山山脈」のようです。
しかし絵から受ける感覚は天上界です。
平山郁夫さんも、玄奘の見た「須弥山」が見えていたのかもしれません。
壁画を見終わった時、係の方が閉館の戸締りをしに来ました。
「あ、初めに買う、と決めた本を買わないと!」と思い出して、売店へ急ぎました。
続く