ひろみの広い空11
ひろみは驚きました。
「えー、だって、私がきちんとわかっている時にお母さんは私を子供だと決めつけて怒るし、私がどうしようかなぁと迷っている時には大人になれって言うんだよ。お母さんと私は似てないよ、全然違うよ、いつだって食い違ってばかりだよ。」
おばの史子はため息をつきながら言いました。
「だからおんなじだって言うの。」
「えー、全然意味がわかんないっ! わかるように言って!」
ひろみは史子の手をにぎって言いました。
「私はお母さんと喧嘩をしたいんじゃない。だけど喧嘩になるの。どうしたらいいのか、わかんないよ。」
史子はひろみの手を握って言いました。
「そう、わかったわ。ちょっと待ってね。どう言えばいいのかな。」
史子は空を見上げてしばらく考えました。
「こういうたとえばなしは、どうかしら? いい?」
「え、どんな話?」
「目の前に一本の道があって、ひろみが自転車に乗っていました。」
「うん!」
「自転車を走らせていると、その道のちょっと先に歩いている人がいました。」
「うんうん。」ひろみはあいづちをうちながら話を聞きました。
「その人はひろみと同じ方向、向こうの方を向いて歩いていました。だからその人は自転車に気付いていません。わかる?」
「うん、わたしと同じ方向を向いてるから、わたしからはその人の背中が見えているんだね。その人はうしろにいるわたしの自転車には気がつかないんだね。当然だね。うん、わかるよ。」
「はい、そこでひろみは自転車のベルを鳴らしながら、その人の左側を通ろうと思います。その人は左に寄ってしまったので、ひろみはあわてて右へハンドルを切ってその人の右側を通ろうとします。するとなぜかその人は右側に寄ってしまったのです。そうこうしているうちにひろみの自転車はその人のすぐ後ろにきてしまったので、ひろみは自転車を止めました。」
「うーん、いらいらするね。でも、そういう事ってあるね。」
「でしょ。それがひろみとお母さんなのよ。」
「えーーー!? どういう事? おかあさんは私の自転車の行く方向に動いちゃうって言う事?」
「じゃあ、これから説明するわね。」
史子は不満気なひろみの顔を見て、小さくうなずきをくりかえしながら言いました。