第四部11話 高僧の行列(後七日御修法だ!3)
東寺で平安時代から行われている後七日御修法の最終日に、東寺に行きました。
東寺の境内の隅にふだんはひとけのない、灌頂院という所があります。
そこは重要な御修法や儀式が行われる時以外は、しめてあるそうです。
後七日御修法の儀式はその潅頂院でおこなわれるということです。
灌頂院の前には、儀式の行列が通るように道がつくられ、ロープが張られていました。
ロープの手前に見物客が何人かいました。
(コロナのこともあって、見物客は思ったより少なかったです)
本宮の門のところにいた、平安時代のような衣装をされた方が、灌頂院の門の前に立っていました。
しばらくすると、その人がひざまずき、頭をさげました。
「もう間もなく出てこられる、ということなんだな。」
と思いました。
ふと見ると、灌頂院の門の前で待ち構えている人がいるのですが、なぜか一か所だけ空いているところがありました。
「あれ? なんであそこだけぽっかりと空いているの?
あそこに行ったらよく見れる所なんと違うん?」
と思いました。
きょろきょろしても、誰もそこにはいかないので、私はその空いている所に移動して、見物することにしました。
神仏さま、お大師さまが、私のためにそこをあけておいて、ご用意してくださったのかもしれません。
門が開き、中から、リーダー格っぽい雰囲気の高僧の方と、勅使の方、それと天皇陛下の御衣が入っていると思われる箱を担いだ方が出てこられました。
そのあとを、御修法に参加された高僧のみなさんと赤い大きな傘をさしかける係の方の行列が続きました。
赤い大きな傘に挿しかけられた高僧のみなさんが、境内の向こう端にあるお大師さまのおられる、大師堂までゆっくりゆっくり歩いていかれました。
その行列は、なんともいえない、平安時代の空気を感じさせました。
私はスマホのカメラをむけて、動画を撮影しました。
早朝から昼過ぎまで一日三回、御修法の行をおこない、天皇陛下と国家の安泰、世界平和を祈る・・・それが七日間続くというのは、傍で見ているより、実際にやってみるとかなりしんどいものではないかと思います。
人のために、世界の平和のために、祈る時、めっちゃ本気で祈らないと、へたすると、相手の苦しみや世界のもろもろのものを感じ、のまれてしまいます。
とことん真剣に神仏、弘法大師さまと一体化して祈る必要がある、と思います。
大師堂でみなさんはあつまり、行列の先頭の高僧の方がリーダーで、行列をとりしきり、大師堂にあがり、代表でお大師さまにご報告されたようです。
その方が大師堂の奥から出て来れられたのを見て、私は、灌頂院のことを思い出しました。
前日、後七日御修法について調べていると、御修法の終わったあと、その会場の灌頂院は一時間だけ公開される、ということでした。それ以外の時は未公開なんだそうです。
それで私は、大師堂から、境内の向こう端にある灌頂院まで移動することにしました。
つづく