第三部031話 「悪」がもがく（初夏の仁和寺４）

仁和寺には何度も行っていますが、
金堂にあがったことはありませんでした。

今回の五大明王祭が初めてでした。

仁和寺の金堂

お経を唱えられ、法話があってから、
金堂のなかの仏像などがあるところの
裏側の「五大明王壁画」を見に行く
という運びになっているということでした。

まずお経を唱えられた時、
私の身体の奥から

葛藤が湧いてきました。

それは
悪いことを考えたい～！
悪いことをしでかしたい～！
悪いことをいっぱい言って人を困らせたい～！
というような悪い鬼のようなものが
なりをひそめて隠れていたのに、

そこにおるじゃろう、とみつけられてしまい、

五大明王祭のポスター（不動明王）

ぎゃあああぁ！　と

暴れているような感じがしました。

それが痛みをともなって、というのか、

苦しみをともなって、

くくくくぅ！　と　もがいている感じがわかりました。

そのもがいているものは、私であって私でない、

という不思議な感覚でした。

今回、マスクをしていたために、
私が「いたたたた」という顔をしていても
それを人に見られずにすみました。

それだけでなく、

「密をさける」ために、参拝者の椅子が
ひとりひとり距離をおいて置かれていたために

私が「ううううう」と体内に痛みを感じて
もがいていても

その「悪あがき」は悟られずに済みました。

・
実際には「悪いことをしたい」と

思う鬼のようなものは

子供の頃に親の目をひきたくて、

悪さをしたりするものなので

きっと人々の無意識の領域に隠れ潜んでいるもの

なのだろうと思います。

お経が終わって法話がありました。

あまり聞こえませんでしたが、

難しいお経などは忘れても、
「身口意」の三つの事だけは
忘れないでいたらいいですよ、と言う話でした。
・
「身口意」というのは仏教用語で
身体と口と意識での活動を言います。

身＝身のおこない。
行動や動作など。

自分が身体を使ってどんなことをしているか？

口＝口のおこない。

言葉や話など

自分が口をつかってどのようなことを話しているか？

意＝意識のおこない。
心や頭のなかで意識や気持ちなど
自分が意識でどのようなことを思っているか？

良い行動をし、良いことを話し、良い意識をもって
生きるといいですよ、ということです。

体内で暴れていたものは、
きっと過去の悪い身口意をしてきたもの
なのかもしれません。

参拝客は全員立って、
金堂の裏にむかって行きました。
これから五大明王の壁画を見ます。

つづく