Smileゆり(柳澤由理)のはてなきブログ

魂と身体から自信を取り戻す・世界平和のメッセージ

ひろみの青い空9

「ひろみ、はい、これ」
と言って史子は1本の胡瓜をひろみに渡しました。
「おばさん、ありがとう。」
と、ひろみは受け取ってから
「あれ? これ、食べていいの?」と聞きました。
「そうよ、今から《おひる》にするから、持ってきたおにぎりとこれとで、お昼ごはんにしましょう。」
「わぁい! お腹が空いたなぁって思ってたとこだったんだ。おばさん、さすが!」
「私もお腹が空いてきたとこだったのよ。あっちの木陰に行きましょう。」
ひろみはもぎたての胡瓜を左手に、おばさんの作ってくれたおにぎりを右手に持って、左右交互にかぶりつきながら食べました。
「うひ。むふ。はひ。ふふん。」
言葉にならない感嘆符が溢れてきます。
無心になって食べていると、ひろみは涙が出て来ました。
「う、うわぁーん! おばさんのおにぎり、美味しいよぉ!」
「そうか、そうか、なら、もうひとつ食べるか?」
「うん!食べる! いいのぉ?」
「いいよ、いつもより沢山作ってきたから、まだあるからね。」
「うん、ありがとう!」
ひろみは史子からおにぎりを受け取り、食べました。

食べながら、ひろみはふと、思い出していました。
こういう楽しい食事は、幼稚園の頃はあったなぁ。いつからなくなってしまったんだろう? いつからお母さんはにこにこしなくなったんだろう? いつからごはんの時間が辛くなったんだろう?

「おばさん、こんな美味しい食事って久しぶり。食べ物の味もわかんなくなってた。」
史子は何も言わずに頷いていました。
「お母さんは、いつからお母さんじゃなくなったんだろう?」
「え?」
「お母さんは昔はちゃんと私のお母さんだった。弟と私のお母さんだった。」
「・・・」
「でも今は、お母さんなんだけど先生みたいな。」
「・・・」
「お母さんは、いつまでも子供じゃないんだし、とか、言うの。私、お母さんと仲良しでいたいだけなのに、あなたはもういいかげんに大人になりなさい、て言うんだ。」
「そうか。」
「でもある時は、私は自分で自分のこと、わかってるのに、やたらめったらあなたは子供だ、まだ自分のことがわかっていない!と言うし。」
「うん、うん」
「もう、なんでいつもお母さんと食い違ってしまうのか、わかんないよー。私はお母さんのこと、嫌いじゃないし、逆らうつもりもないのに、なんでだか、ぶつかってしまうんだぁー!」
ひろみは思いがけず、ぶちまけてしまいました。